【ニュージーランド発】子どもの「個性」を重視。ひとりひとりの個別プログラムを組む徹底っぷり!

【ニュージーランド発】子どもの「個性」を重視。ひとりひとりの個別プログラムを組む徹底っぷり!

はじめまして! ニュージーランドに移住して早16年が経ち、気がつけば二人の娘たちも小学校の高学年。ニュージーランド流「のびのび育児」にすっかりハマってしまったトッド恵理子です。緑いっぱいの自然に囲まれて暮らすニュージーランド人たちは、大らかな人が多く価値観もダイナミック。そんな国で初めて経験した育児・保育は、日本育ちの私にいい意味で大きなショックを与えてくれました。
そんなニュージーランドのスゴいい育児・保育を日本のみなさまにもお伝えしたいと思います!

3歳以上は週20時間まで保育料が無料!ホップスコッチの概要

ニュージーランドののどかな酪農地帯に囲まれた小さな町にあり、私の娘たちも通った私立保育園「ホップスコッチ」。この保育園の大きな特徴は「ひとりひとりの個性を育てる保育」に力を入れてること。
ここでは、3ヶ月~3歳半と3歳半~5歳までの子どもたちが二つのセンターに分かれて生活しています。
開園時間は8時~17時15分までで、大半の園児は9時~9時半くらいに登園し、午後のおやつの時間前後になるとお迎えがやって来て家に帰ります。母親の仕事をしている曜日だけ通園するという園児も多いので、園児の顔ぶれは曜日によってまちまち。もちろん、親が働いていなくても入園は可能です。
保育料は1時間当たり2歳以下の場合で6.5ドル(約520円)、2歳以上で6ドル(約480円)と日本に比べるとやや高めですが、3歳以上では1日6時間、週20時間まで無料になり、世帯収入によって政府からの補助金も出るので、保護者にとってそれほど負担にはなっていないようです。

子どもの「個性」を重視。「みんなで」何かをすることは無いのがNZ式保育!

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私はニュージーランドの保育や教育を日本のみなさまにも知っていただきたくて、現地の保育園や幼稚園、小学校へのボランティア紹介を行っています。日本で保育士をされている方にもよくご参加いただいているんですが、まず、ボランティアに参加された方々が驚かれるのが、ニュージーランドの保育園では子どもたち全員で何かをする時間がほとんどないということ。

日本の保育園だと、お歌の時間にはみんなで歌を歌い、粘土の時間にはみんなで粘土をし、外で遊ぶ時間にはみんなで外で遊ぶんですが、ニュージーランドの保育園では子どもたちはそれぞれがそれぞれのしたいことをして遊んでいます。一見、何の規律もなく、好き勝手に遊んでいるだけに見えるニュージーランド流保育。ちゃーんとした理由があるんです。

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子どもとは本来、好奇心旺盛でいろんなことに興味を持つけれど飽きるのも早いもの。そして、何に興味を持つか、どれくらいの期間で飽きるかは一人一人違っています。ニュージーランドでは、1年の初めに予定が組まれる「テディベアピクニック・デー」や「グランドペアレンツ・デー」、「ドレスアップ・デー」、「パジャマ・デー」などの大きなイベント以外は、保育士主体で「今は○○の時間」と決めるのではなく、子どもたちひとりひとりに「今」やりたいことをやらせることで子供たちの個性を大切にし、自主性を育てるのです。

「大きなイベント以外は」といっても、たいていの子どもはイベントが大好きなので「イベントに参加するのイヤ!」ってぐずる子供の話はまず聞かないですけどね(笑)。年間イベント以外にも、月別のプログラムとして日曜大工の日があったり、お菓子作りの日があったりもするんですが、これも別に参加したくなければ参加しなくても全然OKなんです。

園児ひとりひとりのゴールを設定。1対6の体制でも個別プログラムを実行する方法とは?

ニュージーランドの保育園の中でも特にホップスコッチ保育園のスゴいところは、ひとりひとりの園児に対してゴールを設定し、それに合わせたプログラムを組んでいるところ。
恐竜好きの子どもなら恐竜の、昆虫好きの子どもなら昆虫についての理解が深まるように、「運動万能になりたい!」という子どもには運動能力の発達につながるようなプログラムを組むのです。

でも、子ども6人に対して保育士はたった1人(3~18か月の乳児の場合は子ども3人に対して保育士1人)。ひとりひとりの園児に個別にプログラムを実行するなんて不可能。
ではどうしているのかというと、2週間単位で順番にフォーカスする子ども数人を選んで、その期間毎に対象となった子どもの興味に合わせたプログラムを作り、それぞれの子どもの個性を伸ばします。もちろん、プログラムには参加したい子ども誰でも参加できます。
子どもの興味は千差万別。子どもたちは、自分が対象となっている期間は自分の興味のある分野についての知識を思いっきり伸ばすことができますし、対象となっていない子どもにもさまざまな分野の学びの機会を提供することで、新たな興味を引き出します。

普段は自分の興味のある遊びにだけ集中している園児たちですが、午前10時と午後3時のおやつの時間の前の10分ほど設けられている「マットタイム」だけは別。このときばかりはベルが鳴るとみんな一斉に室内に入って来てマットが敷かれている場所に座り、先生のお話を聞いたり、歌を歌ったりします。
とはいえ、それぞれが自由に好きなことをして過ごす時間の方がはるかに多いこともあってか、子供たちはマットにじっと座っているのが苦手なようで、後ろを向いたり体をゆすってみたり・・・。日本の保育園に比べて集団行動に必要なスキルは身に付きにくいかもしれません。

「個性」と「規律」の良いとこ取り保育が理想かも?

ニュージーランド流保育、いかがでしたか?子どもの個性や自主性を育てることを優先するニュージーランドの保育に、規律を守り集団生活に必要なスキルを身に付けることを優先する日本の保育。一概にどちらがいいとは言えませんが、日本では保育園に限らず、「みんなと同じが一番」という横並び意識が強すぎることの弊害も多いように感じます。

その点、ニュージーランドは「個」を抑えて集団に適合する能力を養うより、「個」の部分を思いっきり伸ばすのが先と考えているんですね。
今後ますます国際化する社会に適応できる子供を育てるためにも、幼いうちからさまざまな分野について学ぶ機会を与え、自分の興味のある分野を思いっきり伸ばすニュージーランド流保育もバランスよく取り入れるのが理想かもしれませんね。


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著者プロフィール

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世界・海外の保育チーム
世界・海外各国の「スゴいい」保育に目を向けることで、逆に日本の「スゴいい」保育を照らすことにチャレンジするチーム。今日明日も”世界・海外の保育チーム”はアンテナをピンと張り、海外の保育をみなさんに紹介します。

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