事故が起きた時、応急手当だけで保育者の仕事は終わらない?

事故が起きた時、応急手当だけで保育者の仕事は終わらない?

前回は、事故が起きた直後の場のコントロールについてお話しました。今回は、場のコントロールを終えた後の処置の方法について、お伝えしていきます。

感染防止を目的とした使い捨て手袋の使い方

いよいよ倒れた子どもに近づいていきます。呼びかけは、子どもの肩を叩きながら行ないます。応急手当をするときは、子どものカラダに触れる場面に備えて、子どもに近づくと同時に使い捨て手袋をはめましょう(「保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドライン/厚労省」)。

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大人が傷病者である場合に比べると、子どもがAIDSなどといった重大な感染症を患っている可能性は低いでしょう。しかし、過去には母子感染でB型肝炎を患った子どもを通じて、集団感染が確認されたこともあります。吐物や血液に触れる場合は、感染防止のための手袋使用が望ましいとされています。特に保育者が媒介者とならないために、使用を心がけましょう。

感染防止のために。手袋持ち歩きのすすめ

「吐物を素手で受け止めながら子どもをトイレに誘導することが保育者の美徳…」あるいは、「保育者が手袋をつけて子どもに触れることは、汚いものとして扱うことだ」と嫌悪された時代からすると、保育施設で使い捨て手袋が使用される機会は増えてきました。

しかし、まだまだ、うんちや吐物で手を汚さないことが目的になっていることが伺えます。くり返しになりますが、手袋をはめるのは、感染経路を断って集団感染を防ぐためです。そして、子どもたちは日常的にケガをします。下痢や吐物の処理のための準備だけだと、いざ応急手当をというときに、流れを止めてしまうことにもなります。ぜひ手袋をひと組、個別に持つことも検討してください。

保護者の不安を解消する報告と記録の取り方

場をコントロールして、手袋をはめて、その場でもっとも適当な応急手当ができても、保育者の仕事はそこで終わりではありません。保護者の不安を解消することが大切です。それは「どういったシチュエーションで、どのようにケガをして、こんな処置を行ないました。今はこうした状態です」と、保護者に伝わる形で、保護者が納得する形で報告を行ないます。

それだけの報告を行なうためには、記憶に頼るのではなく、可能なかぎりリアルタイムに記録をします。人間の脳はきっかけがあると上書きされる仕組みになっています。記憶していたつもりでも、何かをきっかけにして、事態が見えない曖昧な報告しかできないことになりかねません。開始当初の段取りに記録する役割も組み入れたいところです。

集団保育の応急手当における初期対応の手順

その場で記録を担う保育者が決まったら、目で見て記録するだけではなく、なるべく応急手当に関わる人間同士がひとつひとつ声を出し合って、声を聴き目で見たものを時間とともに記していきます。声を出し合うことは、互いに確認しあうことにもつながりますし、もしリアルタイムに記録ができなかった場合も、あとで思い出すことにも役立ちます。

最後に、集団保育の初期対応の手順をまとめます。

  1. まず周りの子どもの安全を確認する
  2. 手助けできる保育者に呼びかけて、迅速に応急手当ができる状況を確保する
  3. 手袋をはめて傷病児に呼びかけ、反応がなかったら緊急通報とともに記録を開始できるように役割を分担する

いかがでしょうか。応急手当の技能以外の流れについてお届けしました。


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著者プロフィール

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遠藤登(保育安全のかたち)
保育の安全性を高め、重大な事故を防ぐために、保育現場における救命処置法ほか、ヒヤリハット分析「チャイルドSHELモデル(c-SHEL)」の教育と保育リスクマネジメントの研修を開催しています。主な著書、『保育救命-保育者のための安全安心ガイド-』(株式会社メイト)ほか。

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