保育園のお昼寝の呼吸確認は、「補助呼吸」の考え方が正しい?【前編】

今回は、窒息の早期発見に大切な、睡眠時の呼吸の確認について、何を確認して、どこにつなげていくことがいいのか?「補助呼吸」に焦点を当てて考えていきます。ポイントは、呼吸が止まったかどうか?の確認ではなく、呼吸が止まっていなくても介入していいということです。

赤ちゃんの呼吸数の変化と補助呼吸について

まず、呼吸確認を考えるにあたって、呼吸についての理解を深めておきましょう。呼吸とは息を吸ったり、吐いたりしているだけでなく、赤ちゃんから大人まで、それぞれの年代別に呼吸数の「正常値」というものがあります。

年代別の呼吸数の参考値(京都府立医科大学)
年齢 呼吸数(/分) 心拍数(/分) 血圧(mmHg)
乳児 35 120 90/60
幼児 25 110 100/65
成人 16~20 60~80 130/90

赤ちゃんや子どもは、まだ呼吸器官が未熟なので、大人にくらべて呼吸数が多くなっていることが判ります。簡単にいうと、この値を大きく下回ってしまうと、カラダ、特に脳にとって必要な酸素量が足りなくなって、その脳が機能障害を起こしてしまいます

呼吸が弱々しいときは、気道確保や人工呼吸を最初に行なう

カラダの中の酸素の状態というのは、目で見ることはできません。しかし顔色が悪い様子(チアノーゼ)を見てとったり、呼吸数の変化を目安として、気道確保や補助呼吸という応急処置が行なわれます。

心臓や呼吸の動きが止まったか、止まったことが疑われる際に行う「心肺蘇生法」では、最初に胸を押しはじめて、そのあとで人工呼吸という手順です。しかし、呼吸が極端に弱々しかったり、動いているけど、正常値より回数がめっきり少ない場合は、その呼吸をサポートする目的で、呼吸が通りやすく気道確保をしたり、補助目的の人工呼吸を行ないます。

呼吸確認は止まったかどうかではなく、異常かどうかが問題

呼吸の確認が大事なことは誰もが知っています。でも、「止まるかどうかも判らないのに・・・」、「これまで何もなかったんだったんだから、今日も大丈夫だよ」。また、「定期的に、しかも5分や10分という短時間に、くり返し見た方がいいのはどうして?」という気持ちが芽ばえるかもしれません。

しかし、保育園のお昼寝の時間に、うつぶせ寝やお昼寝時間の窒息を原因に子どもが亡くなっています。過去にうつぶせ寝による事故が起きていたことを知っているのに、うつぶせ寝を放置したり、窒息事故に対応できていなかったということになれば、保育の注意義務を怠ったものとして過失を問われます。

しかし、こんな風に思われる方もいらっしゃるかもしれません。「だとしても、もうちょっと間隔が長くてもいいんじゃない?」

普段通りの呼吸ができているかを5分前とくらべる

赤ちゃんのお昼寝時の呼吸は、もともと不安定なものです。そして、うつぶせ寝や横向きの寝姿だと、口もと周辺の二酸化炭素が高まりやすいことも判っています。呼吸は止まらないまでも、5分や10分前とくらべて、カラダにわるい影響をもたらす、異常な呼吸になることは考えられます。呼吸確認とは、その呼吸の「変化」を記録していく手段だといえます。

定期的に呼吸が安定しているかどうかを観察するにあたっては、「普段どおりかどうか」がポイントです。応急処置で普段通りではない呼吸というと、死戦期呼吸を指しますが、保育園では、個々の子どもに対して、いつも見ている通りの呼吸ができていなかったら、普段通りの呼吸ではない異常な呼吸として、処置が必要かどうかを判断します。

死戦期呼吸は、あえぎ呼吸ともいわれる、心停止直後の傷病者にみられる異常な呼吸で、しゃくりあげるような様子がひとつの特徴です。一見して呼吸をしているように見えるので間違えやすいですが、実際には胸の動きもなく呼吸していないことが判ります。

今回はここまで。次回は、お昼寝時に窒息を見つけた時の対処法など、具体的な対処法に踏み込んでいきます。


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著者プロフィール

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遠藤登(保育安全のかたち)
保育の安全性を高め、重大な事故を防ぐために、保育現場における救命処置法ほか、ヒヤリハット分析「チャイルドSHELモデル(c-SHEL)」の教育と保育リスクマネジメントの研修を開催しています。主な著書、『保育救命-保育者のための安全安心ガイド-』(株式会社メイト)ほか。

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