保育士は言わない「危ないから遊んじゃダメ!」という一言。安全と豊かな保育を両立する方法論とは。

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[シリーズ「シンカする保育×安全」の記事の一覧] 
[第2回はこちら▶「保育士さんって子どもと遊んでいるだけ?」そんな思いの裏に、保育の真髄があった。


平成26年、報告に上がった保育施設における事故は177件。そしてそのうち、死亡事故は17件ありました。お子さんが、保育園に行ってから、帰ってくる。これは普通のことであり、そうではないのかもしれません。

しかしながら、子ども達が園庭を走り回り、転んで怪我をしたとしても、「園庭を走り回ってはいけない」、という保育者はいません。子ども達が保育園に通い、笑顔で帰っていく。その裏側では、子ども達の命を守り、よりよい保育を行うためのシンカが起きていました。


安全ばかりを優先してもよい保育ではない。豊かな保育とのバランスの取り方。

―まずは、現在の遠藤さんの取り組みを教えて下さい。

遠藤:「救命救急を学ぶプログラムを提供し、知識とスキルの普及をしています。「一般の人が善意に基づきする救命救急」と、「保育者が学ぶべき救命救急」は、法的な意味合い等、全く別のものです。

そしてもうひとつは、保育者向けの、現場に必要なリスクマネジメントの普及です。保育の教育的な価値を高めるために、どのようにリスクとのバランスをとるか?という所に焦点をあてています。例えば、赤ちゃんだったらずっと抱っこをしているかもしれないですが、大きくなるにつれ、「歩かせてあげたい」、「階段を登らせてあげたい」、「外で走らせてあげたい」と変化 していきます。それに伴いリスクも大きくなります。そのようなリスクを無視し、教育的な価値だけを優先すれば、大きな事故に繋がります。そのバランスをどうとるのか、という所が重要になるんです。

「リスクの回避」と「リスクのコントロール」の違いとは。

安全ばかりを優先して、教育的価値を無視するわけにはいかないですよね 。でも、例えばアレルギーに関する除去食、となると話は別です。食育という教育的な観点はありますが、その子にとっては絶対に食べてはいけないものです。つまり、その子にとっては、取り除かなくてはいけないリスクです。これは、「リスクの回避」です。保育現場では、この「リスクの回避」、そして前述した、「リスクのコントロール」が混在しています。しかも、時間帯や年齢、発育といった要因によって変わるので、慎重に考えていかなければなりません。リスクの回避に偏る、教育的価値をどう高めてくかだけに偏ってしまうことは起きがちです。そこをどのようにうまくバランスをとっていくかを、皆さんと一緒に考えています。

子どもという「不確定要素」を踏まえ、子ども達のあそびを制限しない新たなリスクマネジメントが生まれている。

遠藤:保育という学問がまだ、安全の観点からよりよい保育を考えていく、という考え方に馴染みがありません。応急処置は、事故が起きた時の対応で終わってしまいます。保育現場で必要なリスクマネジメントというのは、明日の「よりよい保育」につなげていかなければならないですよね。まだまだそこは手付かずの分野です。

例えば、「C-SHEL」という考え方があります。「SHEL」はものづくりの分野で事故分析モデルとして使われていたものです。中心となる人(Liveware)に影響を与えるSoftware、Hardware、Environment、Livewareから事故リスクを大きくする要因を見つけようとする分析方法です。

これが医療分野、そして保育の分野にも輸出され、実際に使われ始めています。しかし、この「SHEL」をただ保育現場にあてはめても、あまりうまくいかないんです。

保育って、子どもが能動的に動く、という不確定要素ばかりじゃないですか。その不確定要素の存在を考えていない「SHEL」モデルでは、適切に分析し、よりよい保育に繋げることが出来ない。そこで、「C-SHEL」という、子ども(Child)という要素を入れた分析手法をお伝えしています。

C-CHELとは?遠藤さんが運営するメディア「保育安全のかたち」が詳しい。
保育の事故データベースの事故発生の要因分析の読み方

「危ないから、禁止!」と言わない保育を考えよう

編集部:「C-SHEL」モデルを使い、どのように、よりよい保育を実現していくのでしょうか?例えば、こんな事故のケースで考えてみましょう。

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ともすれば、「雲梯は危ないから、禁止!」となりかねません。ですが、「C-CHEL」モデルに基づき、冷静に分析と改善案を積み重ねていけば、豊かな保育を実現できます。Hardwareについて検証し、「雲梯の下の地面には、砂を盛り、常にクッション性を確保するよう整備をする。」となれば、安全性は高まります。あるいは、Livewareについて検証するなら、「園児に転落時の手のつき方について指導をする」といしていけば、ますます安全性は高まります。

安全と、子ども達にとっての豊かな保育のバランスをとり、子ども達の最善の利益を考えることは容易ではありません。「もう雲梯はダメ!」と言ってしまうのではなく、子ども達がまた雲梯で、のびのびと遊ぶ環境を作れるように、保育現場では試行錯誤の取り組みがあります。それは、子ども達がのびのびと生活を送っていけるように、そして、元気な姿で帰っていくためです

*第2回へ続く

(文責:山崎岳)


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スゴいい保育編集部
「スゴいい保育」を通じて保育という仕事の素晴らしさを伝えていくことにチャレンジするチーム。日本中の色んな「スゴい!」「いい!」保育を日々探し、みなさんに紹介します。

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