【アメリカ発】親が日常的に保育の質をチェック!ニーズも反映しやすい親共同保育園を徹底解剖!(前編)

【アメリカ発】親が日常的に保育の質をチェック!ニーズも反映しやすい親共同保育園を徹底解剖!(前編)

アメリカ、カリフォルニア州に渡米して20年たちました。かつて息子が2歳~4歳の時に過ごした保育園で、今だ週に2日だけですが、エイド(先生のアシスト)をして働いております。子供は息子が一人だけでも、実際には、まるでたくさんの家族がいるような感覚で、別の側面から見た子育てを楽しんでいます。
ただし保育園と言っても、一般のそれとは少し内容が異なります。通ってくる子供の親同士が一緒に、保育園の経営や運営を行うものです。このアメリカ生まれのユニークな形態の保育園、Cooperative(Co-op/共同)保育園を今回ご紹介したいと思います。

具体的なお話に入る前に、Co-op 保育園の歴史的背景に少し触れておきましょう。1916年、シカゴ大学の12人の教職員の妻たちによって発案されたのが始まりでした。
彼女たちは、早期教育の重要性に早くから気づき、その推進にむけ、活動を重ねていきました。その努力の末、1920年代、それぞれの異なる州で5つのCo-op保育園が設立されました。その中でもカリフォルニア州の発展ぶりは顕著で、1948年には、カリフォルニア州に初のParent Cooperative Councilも発足されたほどです。この流れは、アメリカ国内ばかりか、カナダやニュージーランドの他、英国、フランス、さらにヨーロッパにも波及してゆきました。私が働くCo-op保育園、Millbrae Nursery School(ミルブレー・ナーサリー・スクール)は、1938年から77年の長い歴史があり、実際にはParent Cooperative Council(上記参照)が発足される以前から存在していたということになります。カリフォルニア州でも、最古のCo-opのひとつで、なんと祖父母の時代から、先祖代々この保育園に通っている家族も少なくありません。

Co-op保育園は与えられる責任を果たせる方であれば、だれでも参加できます。しかし、預けっぱなしではできないシステムなので、Co-opの役割を果たすために、共働きの家族は、祖父母や兄弟姉妹、お金を支払ってナニーやエイドにお願いしている場合が多いのも特色のひとつです。

Co-opの形態を取り入れた具体的な教育方法とは?

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すでに前述した通り、このCo-op保育園とは、親たちが共同ですべてを行います。子供が卒業すると、また次の世代から世代へと受け継がれてゆくのです。運営内容は政府による基準がありますが、それらを取り入れた上で、それぞれのCo-op独自の環境や事情に合わせてプログラムが開発されます。独自のプログラム開発にあたっては、親たちの意見も十分反映されるのはCo-opの長所のひとつです。

親たちから支払われた授業料や寄付等で、資格をもった先生や必要なスタッフ(エイドや経理など)を雇い、さらに親たちは、少なくとも週1は、子供が保育園にいる時間に一緒にクラスに参加します。自分の子供だけでなく、他の子供たちの世話もしながら、先生のアシストを行い、さまざまな方向から育児を学んでゆく、すばらしい教育方法です。他の子供のお世話をすることは、最初なんとなく違和感を感じるかもしれません。しかし、実際にCo-opの現場でやってみると、これが大変有益な子育て経験になることを実感します。さらに、専門の先生や他の親からも情報が入手できますから、子供が卒業する頃には、膨大な知識を身につけることになるのです。

先生のほとんどがCo-op育ち!その経験が更にブラッシュアップされて・・・

一方、クラスを担当する先生たちの存在も、質の高い内容を提供していく上で欠かせない大きな要素です。Co-opで働く先生たちの多くは、自らもCo-op保育園の親あるいは子供時代の経験者です。子供の立場と大人になってからの立場を両面知っていて、自分の経験を活かしたユニークなアクティビティを提供し、子供たちの注目を集めています。

また、こちらの学校で働く先生たちは、定期的にワークショップに出席し、スキルと情報のアップデートを怠りません。それをクラスに持ち帰り、親たちにも、その知識を伝授します。参加する親たちは、ホットな情報をどんどん手に入れることができるのです。 

クラスで起こる問題、たとえば親離れが悪い子供、乱暴な子供、言うことを聞かない子供、おとなしすぎる子供等、さまざまなタイプの子がいますが、これらも先生、スタッフ、そしてその場をサポートする親たちと、定期的にミーティングを開き、それぞれの立場で一緒に解決してゆきます。不思議なことですが、血のつながりを持たない子供たちでも、普段からめんどうを見ていると、自然と親近感が沸いて、わが子のようにサポートしてあげたい、そういう強い信念がこみ上げてきます。私も毎回実感しています。

後編につづく

(後編では、クラスの様子を具体的に紹介していきます!)

文:Rika Wise

ライター&イラストレーター。
Co-op保育園のエイドとして長年従事。日本在住時は、英字新聞社にて、広告事業部の大使館窓口として、さらに日本在住の外国人読者向けにさまざまなイベントの企画・運営も行う。著書「ハムスターのきもち」ボイジャープレス


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世界・海外の保育チーム
世界・海外各国の「スゴいい」保育に目を向けることで、逆に日本の「スゴいい」保育を照らすことにチャレンジするチーム。今日明日も”世界・海外の保育チーム”はアンテナをピンと張り、海外の保育をみなさんに紹介します。

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