キャリアの出発が営業マンだからこそ見えてくるもの【インタビュー】

キャリアの出発が営業マンだからこそ見えてくるもの【インタビュー】

【プロフィール】
内山恵介(うちやま けいすけ)1970年生まれ
1993年 4月  現在の損保ジャパン日本興亜株式会社入社
2011年 4月  (財)日本興亜スマイルキッズ設立 代表理事就任
2011年 6月 日本興亜スマイルキッズ江戸川橋保育園(認可保育所)開設
2014年 4月 やる気スイッチグループHD KidsDuoInternational事業推進部長
2015年12月 サクセスホールディングス株式会社
     サクセス子ども子育て研究所所長 事業開発部 部長

大手損保人事部時代に立ちはだかった壁 「有能な女性社員たちが育休復帰を果たせない!」

― これまでのキャリアを聞かせていただけますか
新卒で大手損害保険会社に入社し、地方勤務で営業をがっつり経験した後、本社に異動。営業推進部、自動車営業部、人事部、経営企画部などを経験。そこで保育と出会い2011年6月に「日本興亜スマイルキッズ江戸川橋保育園(認可保育所)」を開設しています。

2年前に幼児教育業界に転職したことで、幼児教育ビジネスの最先端を経験することができましたね。地域最大の認可外保育施設の設立を進める中で、園児募集、スタッフ募集なども含め、開園にまつわる一連の仕事に携わりました。昨年12月にサクセスホールディングス株式会社に入社し、現在に至ります。

―「保育」に携わるきっかけが想像できないように思いますが
新卒入社からしばらくは保育や福祉に強い思いがあったわけではありませんでしたね。20年間の損保会社勤務の中で、人事部女性活躍推進担当として7年間で200名超の女性総合職を採用しました。彼女たちは入社後、自身の頑張りで成長し会社の風土を変える担い手となるほどまでに成長してくれたのですが、プライベートでよいご縁に恵まれて、結婚して妊娠して・・・となっていったとき、育休を終えたら復帰できると思っていたのに、子どもを預ける保育園が見つからず復職を諦めざるを得ない、といったケースがちらほら出てきたんです。救いの一手として事業場内託児所の開設を検討したのが、保育の仕組みについて学ぶきっかけですね。 

―では、社内託児所としてスマイルキッズを設立されたのですか?
残念ながら、当時の法制では、社内託児所は完全なる“コストセンター”でしかありませんでした。また、既に当時託児所を持っていた各企業を見学する中で、低稼働で閑散としている施設も目の当たりにし、施設開設には至りませんでした。(2008年ごろ)

その後、2010年に会社が経営統合され、経営企画部マネージャーとして新規事業開発を任されることになりました。「保険会社における本業とシナジー(相乗作用)を見込める社会貢献性の高い新規事業の開発」という命題が与えられ、リサーチも含めて医療や環境、福祉など多分野を同時並行で検討しましたが、最終的には保育を事業化するための諸問題を解決することに成功し、自ら(財)日本興亜スマイルキッズを子法人方式で開設するに至りました。

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「保育現場」そこには思考回路の違いが待っていた

―全くの畑違いでスマイルキッズの時はご苦労されたのでは?
スマイルキッズでは保健所・行政から監査や指導を受けアラ探しをされるため、褒め合う文化が育ちにくい。そのためか保育士同士がマイナス思考(不満)で横のつながりを作り、経営との対立構図を生みやすい傾向がある。これは子どもにも保護者にも決して良いことではないのですが、保育士の気持ちの持って行きどころなのかもしれません。

生まれ育ちがビジネスである僕は、「問題があれば解決する」事があたりまえなのですが、保育士さんたちは「問題を認識し共有するだけ(解決しなくて)で良い」事が多い。共感だけでは意見の積み重ねができないので、「こうだよね」と違う意見を述べると「じゃあもう(分かってもらえないなら)いいです」となってしまう。僕のようなビジネスマンと若い時に保育を志す人とでは問題への着眼点が違うのか意見交換の継続ができませんでしたね。

―そのようなご苦労の中にあって2年間離職ゼロを達成されたとか
色々な場面で抵抗は有りましたが、業務改善を積み重ねて「保育士の残業実質ゼロ」「有給休暇100%消化」を実現したことが、2年間離職ゼロという結果につながったと思っています。

保育士の残業0時間 有給消化率100%を可能にした秘策とは

―具体的にどのような過業務改善を行ったのですか?
有給休暇については、毎月のシフト希望に必ず1日から2日の有休希望日を入れてもらいました。希望が記載されていないシフト表は差し戻し(笑)

もちろん、その分の人員配置が必要ですので専任主任も保育に入りましたし、フリーのスタッフを雇いました。残業代にかかる費用を考えれば可能でしたね。

業務改善については、まずは「なにか打ち合わせることは有りますか?」から始まるミーティングの中止。報告だけのミーティングも参加者全員がメモを取ることも禁止。必要ならプリントして配ればいいことですから。

毎年のお便りはフォーマットを作成し基本使い回し。季節の挨拶やイラストの配置に時間を費やすことをやめてもらい、「お便り作成にかける時間は30分」と、制限をかけました。手を抜いているように思えますが、実はドキュメント作成のスキル向上に繋がるんです。

教室内の季節の飾りは、子どもと一緒に保育の中で制作する、100円ショップで購入したものを利用。『手作り』にこだわる保育者に対して「保育の質にどのような差がでるのか」というところまで踏み込みましたので、さすがに反感を買いました。

―反感は続かなかった?
慣れてくると限られた時間で効率的に行うことが身につき、「定時退社」が浸透しました。私自身が直接現場で「作業はコスト」であることを伝え続けることができたことは大きかったと思います。残業がなくなればプライベートの時間も大切にすることができるようになりますよね。これは、人生の満足感に繋がります。結果として2年間離職ゼロとなりました。 

保育の場でも『“ビジネス”で克つ』

―転職のきっかけと現在のお仕事を教えて下さい
約5年にわたる事業開発と保育に携わった経験を自分のキャリアのコアにして、「子ども子育て支援事業へ身を転じたい」と思いたち、入社20年の区切りをきっかけに転職を決意しました。現在は、サクセスホールディングス株式会社において、教育・研究機関であるサクセス子ども子育て研究所の所長であると同時に、事業開発部の部長を兼務しています。保育事業者としてのサービスの質向上のための諸施策実行、サクセスグループが将来にわたって成長を続けられるようにするために、どんな事業領域にチャレンジしていくべきかをカタチにしていく部門です。保育従事者の処遇向上や、仕事のしやすい環境・制度作りなども担当しています。

―仕事でやりがいを感じるときは
私のキャリアの出発は営業マン。誤解を恐れず言えば、『“ビジネス”で克つ』ことこそ、自分のやりがいです。保育に携わっていてもそう。ただし、勝つではなく克つ。相手を打ち負かすことではなく、内なる欲望や葛藤に打ち克つということ。本当に良いサービスだと胸を張れるものを、採算が取れて持続可能なサービスとして世の中に送り出す。それによって自分が勤める会社を成長させ、その事業と会社の成長に自分の成長を重ね合わせることで、カタルシスを感じるという変な性格(笑)です。

4000人の保育士の「残業ゼロ・有給100%・育児介護離職ゼロを」を実現したい

―今後どのようなことをしていきたいですか?
サクセスを保育士の働きやすい会社№1にしていきたい。サクセスは正社員・非常勤あわせて約4000人の保育士を雇用しています。この経営規模の会社が、本気で残業ゼロ・有給100%、育児介護離職ゼロをやりきったら、業界の風景が変わると思いますよ。

公定価格と関係するため、保育士の賃金を上げることは自分の力ではできません。一方で、こういった組織風土づくりは、私の頑張りと発信、巻き込み力によって実現できるものだと信じています。だから私はそこに挑戦したいと思っているんです。

それにより、世の中にサクセスの保育園がどんどん増え、そこで働く保育士がハッピーに働き、地域に子どもが増えて日本が元気になる、そんなスーパーハッピースパイラルを作り出したいと考えています。

保育者一人ひとりのプライベートの充実が子供の笑顔につながる

―内山さんのこだわりは
仕事の上でのこだわりはスピード感重視。見る前に跳べ。40点主義。巧遅より拙速。朝令暮改。変わり続ける姿勢が変わらない。Like a Rolling Stoneです。運営サイドとしてひとりでも多くの保育に関わる人達がハッピーになる事業環境を整えたい。

同僚にはいきいきと働いてて欲しい。道を求める(修行の後の解脱)のではなく、一人の家庭人としてハッピーに暮らせるプラットホームを大切にできる環境が個人の基盤として整うことで子供の笑顔に繋がると思っています。

僕自身も、家庭を大切にしてます。自慢は通算7年間続いている毎朝の家族のお弁当作り。以前は奥さんのお弁当を、今は大学1年の娘のお弁当を毎朝5時起きで作っています。女子大生である娘が友人と一緒に食べても恥ずかしくないようお弁当の色味にはこだわっています(笑)。

できることは一つではないことを知って欲しい

―保育に携わりたいと考えている方に伝えたい事は?
保育は、子供の笑顔を増やし、社会を明るくする意義のある仕事。保育者・事業運営・保育者育成 等多面的な立ち位置、多様なアプローチがあるということを幅広く見て欲しいですね。『保育』を事業として存続・発展させることはとても価値のある仕事ですので保育事業を取り巻く環境も含めて多面的に学んで欲しい。その上で自分にできることを見つけて欲しいと思います。

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【団体概要】
サクセスホールディングス株式会社
http://www.success-holdings.co.jp/

「人から”ありがとう”と言われるサービスを提供」「新たな感謝・感動・価値創造」を理念に受託保育事業・公的保育事業を運営。
〒141-0031
東京都品川区西五反田1-1-8 大手町建物五反田ビル7階
TEL.03-6431-9899(代表) FAX.03-6431-9974


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スゴいい保育編集部
「スゴいい保育」を通じて保育という仕事の素晴らしさを伝えていくことにチャレンジするチーム。日本中の色んな「スゴい!」「いい!」保育を日々探し、みなさんに紹介します。

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