「ここに来るとホッとする」「もうひとつの家庭でした」と言われる仕事【インタビュー】

【プロフィール】
村上 睦子(むらかみ ちかこ)1956年生まれ。川崎市の公立保育園で保育士として10年間勤務。自身の子育てを経て、公立保育園の非常勤職員として復職。週休代替保育士として7年間勤務したのち、家庭的保育「村上保育室」を開室する。開室して9年の間、0-2歳のこどもの保育に携わる。(平成29年3月末で閉室予定)

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結婚・子育てを経て、もう一度“保育”の世界に戻ることに

-今までのキャリアについて教えて下さい
結婚前までは、川崎市の公立保育園に正規の保育士として勤めていました。保育の仕事は大好きだったのですが、主人が自営業者だったこともあり、結婚出産を機に退職。子育てに専念しながら、主人の仕事を手伝っていました。そんな中、娘が通っていた近所の保育園で、園長先生に声をかけられたことがきっかけで、保育の仕事に戻ることになりました。当初は「何かお手伝いできれば」という気持ちでしたが、それから7年、子育てをしながら、週休代替保育士(担任の週休時に、代わりに保育を行う)として、週2回パートタイマーで保育の仕事を続けてきました。

-そこから保育ママを始めたのどのようなきっかけで?
「家庭的保育」に携わることになったのは、職員室で“保育ママ募集”のチラシを見たことがきっかけです。自宅で数名のお子さんを預かる「家庭的保育」という形態を初めて知り、興味を持ちました。子育ても一段落し、主人も大の子ども好き。「わたしにもできるかしら?」と園長先生に相談したところ、「ぜひやってほしい」と背中を押してもらい、家族の賛成もあって、思い切って自宅で3人のお子さんを預かる「家庭的保育」を始めてみることにしました。

注釈)
【家庭的保育】 
保育士や自治体から認定を受けた人が家庭的保育者(保育ママ)となり、行政の委託を受けて、主に3歳未満の子どもを自宅などで預かる制度。1950~60年代にかけて京都市や川崎市、横浜市で始まり、児童福祉法改正により、2010年度から国の事業として位置付けられた。川崎市では「家庭保育福祉員(保育ママ)」という名称で、産休明け(生後43日目)~3歳未満のお子さんを対象に、認可保育所と同様、保護者などが昼間、お子さんを家庭で保育できない場合に、保育士、助産師、保健師、看護師、幼稚園教諭のいずれかの資格を持ち、乳幼児の保育経験がある個人が保護者に代わって、その家庭で保育をする制度として、2015年3月末まで運用されていた。2015年4月「子ども子育て支援新制度」施行により、定員5人以下を「家庭的保育事業」として、改めて国の制度の中に位置づけられた。


「家庭的保育」で、親御さんの子育てに伴走する

-実際にどのように保育をなさってるんでしょうか
「家庭的保育」では、0-2歳のお子さん3名を自宅でお預かりし、保育します。保育園と同じようにデイリープログラムに基づきながら、毎日の保育内容は、子どもたちの発達の状況、日々の体調、機嫌、興味に合わせて柔軟に変化します。天気が良い日はお散歩に行ったり、近所の公園で外遊びをしたり。私が勤めていた公立保育園が連携園なので、交流保育も積極的に行っています。
一人ひとりのお子さんに合わせて、ゆったりとした保育ができるところは、やはり少人数の「家庭的保育」ならではの良さだと思います。毎日子ども達とじっくり関わっているので、今まで担当した、それぞれのお子さん一人ずつに、いろんな思い出があります。
大規模保育園と比べて、親御さんとの距離が近いところにもやりがいを感じます。
ただ、関係が近いだけに、親御さんとの距離のとり方には気をつけていますね。親御さんから子育ての相談を受けることも多いのですが、こちらからプライバシーに踏み込まないこと、親御さんを指導するのではなく、親御さんの子育てに伴走することを心がけています。また、仕事の上での悩みは、家庭的保育者の研修で話しあったり、お子さんの発達や体調で気になることがあれば、連携園の看護師に相談したり、と他の保育者とつながり合うことも大切にしています。行政の担当者や保健所との連携も、とても大切ですね。

子ども達の「ばぁば」、「もうひとつの家庭」の温かな保育を

-保育ママならではのやりがいはありますか?
私はお子さん、親御さんに「ばぁば」と呼ばれています。主人は、「じぃじ」、娘は「ねぇね」と呼ばれているんです。「先生」よりも心理的な距離が近くて、自分でも気に入っています。核家族のご家庭が多い地域ですので、「ここ(保育室)があるから安心して働ける」と言われることがあります。親御さんの助けになっていることを実感できるのは、大きなやりがいですね。
お迎えの時に「ここに来るとホッとする」と言われることもあります。お子さんが卒園する時、親御さんがLINEで「もうひとつの家庭でした」というメッセージをくださった時は、本当に嬉しかった。少人数ならではのきめ細やかさ、温かさを感じる保育を大切にしていますし、親御さんの支えになれることが何よりの喜びです。親御さんと一緒に、二人三脚で子育てをしている感じもありますので、日々の子ども達の成長を心から嬉しく思います。卒園のときはいつも涙が出そうになりますね。お子さんのおじいちゃんおばあちゃんと同じ世代になりますので、保護者の方に「帰省した時に、びっくりするくらいに祖父母に懐いていました」と言われることもありますよ(笑)

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子どもが安心安全に過ごせる環境が、何よりも大切

-保育ママを志望する方に何かメッセージをお願いします
一人ひとりを尊重したきめ細やかな保育、また異年齢の子どもがきょうだいのように育ち合う集団保育の良さ、両方あるところが「家庭的保育」の良いところだと思います。地域の中で見守られながら、子ども達や保護者の方が、まるで「第二の家庭」のように安心して毎日を過ごせるように、家庭的保育者は研鑽をつんでいます。認可保育所とくらべてあまり知られていないので、「家庭的保育」の良さを多くの方に知っていただけるといいなと思っています。
もし、このお仕事に興味を持った方がいらっしゃったら、ぜひ自治体の担当の方に問合わせしてみてください。色々と相談にのってもらえると思いますよ。
ご自宅でお子さんをお預かりする場合は、家族の理解がとても大切です。また、事前に近隣の方の理解を得るのも重要なところ。責任は重いですが、子ども達の成長を直に感じられ、保護者の方とも距離が近く、とてもやりがいがある仕事です。

実は、私の年齢的、体力的なこともあり、開室からちょうど10年、平成29年3月末でこの保育室を閉める予定です。それまでは、事故がなく、安全に過ごすことが一番大切だと思っています。すべてはお子さんが心身ともに安心安全に過ごせる環境があってこそ。今までどおりお子さんに丁寧に関わりながら、お子さんの健やかな成長を見守っていきたいと思います。


【団体概要】
NPO法人家庭的保育全国連絡協議会
http://www.familyhoiku.org/


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スゴいい保育編集部
「スゴいい保育」を通じて保育という仕事の素晴らしさを伝えていくことにチャレンジするチーム。日本中の色んな「スゴい!」「いい!」保育を日々探し、みなさんに紹介します。

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