子どもを理解し待ってあげられるように。ここは安心して過ごせる場【インタビュー】

【プロフィール】
佐藤恭子 理容店、認可外保育園での勤務を経て、現在は特定非営利活動法人ピッピ・親子サポートネットの一事業である「となりのいえ」(放課後等デイサービス)の児童発達支援管理責任者

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大人たちに親切にしてもらった子ども時代。その感謝の気持ちを次世代にお返し

-今までのキャリアを教えていただけますでしょうか
前職は理容師でした。もともと子どもが好きで、子どものお客さんが来ると嬉しく、よく声を掛けていました。理容師をするかたわら、結婚、子育てをしていました。
子育てをしながら、「自分が小さい時に大人たちに親切にしてもらったなあ」という気持ちがすごく湧いてきて、その気持をどんな形で返せるかな、その気持を感謝として今度は私が返す番だな、という思いがずっとありました。
そこで、家庭が必要な子どもたちの里親になることを考えたのです。
まだ自分の子どもも小さかったので、その中で一緒に育てられたらいいなと思い、夫婦で何度か里親制度の説明会へ行きました。
そこで話しを聞くうちに、(里親を)やってみたいという気持ちは変わらなかったのですが、不安に感じたことが一つありました。それは何か(深刻なことが)あった時に自分は里子にどのように接するんだろうという懸念でした。そこで、自分の保育経験を深めるために保育の仕事をしてみようと思ったのです。
まず手始めに、青葉区の認可外保育園で働き始めました。そこでは子どもたちの笑顔や成長していく姿に触れ、信頼関係をつくっていくことにやりがいを感じ、楽しみにもなりました。
そして、まもなくして今の職場(放課後等デイサービス)にも関わることになりしばらく(青葉区の保育園と)両方で働いていました。
保育園でも障がいをもったお子さんがいたのですが、密に関わるところまでいかなかったので(障がい児保育を)やってみたい、という気持ちがあり、ここでの仕事と保育園の仕事を両立していきました。
そして、現在は児童発達支援管理責任者※として(放課後等デイサービスのみで)働いています。

※児童発達支援管理責任者とは
利用児童に対して個別支援計画を作成し療養を主導する立場にある人。資格要件と研修要件が定められている

得意な部分を伸ばし楽しんでもらうために、スタッフみんなで手厚くケア

-仕事内容を簡単にお願いします
子どもの魅力を身近に感じることの出来る仕事です。放課後等デイサービスでは、小学校1年生から高校3年生の障がいをもった子ども達を放課後や長期休暇に預かっています。一人ひとりの子どもの特性に配慮し、好きなことや苦手なことなどを理解して、お散歩や公園、クッキング、制作活動など一緒に楽しみながらお手伝いをしています。
制作活動で作るものは季節に関連するものが多いです。来月おひなまつりなので、今度はひな祭りに関連するものを作ります。子どもが得意な作業、好きな部分で関わってもらう形にしています。たとえばペタペタ貼るのが得意だったら貼る作業をメインにしてもらいます。

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-1日の流れを簡単にお願いします
一日の流れは、開所前にスタッフミーティングをします。ボードを準備し、その上に
子どもたちの写真を置いて、今日は誰が来所する、公園行く子はこの子、配慮する内容はこんなこと、などスタッフ間で確認し合っています。
そして放課後に子どもたちを迎えにいき、大体2時半くらいから(施設を)開けて、夕方5時まで、希望によっては6時までお預かりします。到着したら、体調面などを確認して散歩や制作活動など、決まった活動に声をかけています。
また、おやつは、スタッフ手づくりのものを提供しています。スコーン、お味噌汁やおにぎり、市販のお菓子であれば安全なものを出すようにしています。
夏休みなどの長期休憩になりますと、朝10時から夕方4時が基本で保護者の要望によって、お預かり時間を調整するこもあります。

-どのようなところにやりがいを感じますか?
子どもの変化をみて、何がしたいのかな?何に困っているんだろう?と気づいた時に、「もしかしてこれ?」と示してみると、子どもが「そうだよ」と、伝えるように嬉しそうな表情やしぐさを見せてくれる瞬間があります。
保護者の方からも子どもに関する色んな情報、例えば何が好きか、どんな時に困るかなどを予め聞いていて、その中であれかな、これかなと、こちらも想像を巡らせながら関わっていくのですが、私達がその子の要望に気づいてあげた時の「そうだよね、そうだよね」って確認し合うような、目と目で会話をするような瞬間はお互いに同じ気持だなって思いますし、喜び、やりがいを感じます。
それは、この仕事を始めた頃に感激した8年前と変わることがありません。

役割を持ち自信をつける 子ども同士の励ましはインパクト大

-特徴的なエピソードなどはありますか?
集団生活の中で課題を感じた子がいました。その子の安定を集団以外の場所で図るだけでなく、集団の中で自信ややりがいに繋ぐことが出来ないかと考え、活動の中でその子に役割を作りました。具体的に言うと、絵本を皆の前で読むことをお願いしたのです。
その子は、声を出して読むことは問題なく、個室で(一人で)読むのはとても落ち着いて上手なのですが、集団の中に入り、そこに座って本を読むことはすごくハードルの高いことだったのです。
なので、そこに座って皆に注目してもらって、その子が輪の中心にいて読む、という活動では日によって上手に読めたね、という時もあれば、色んなところに気持ちがいっちゃったかな、という時もあります。
でも、できるだけ褒める場にしたい、という思いはスタッフにあり、その子が上手に読み終わった時に盛大に拍手して「すごいね」「上手だったね」と声をかけると嬉しそうでした。
それがある時、お友達から「すごい~天才だね」と言われた時のその子の表情はとびきり嬉しそうで、子どもがほめた時の子ども同士というのは響いているな、と感じました。
子どもは子どもの中で育ち、何よりお友達が好きなことを教えてもらった日になりました。

-とても良いエピソードですね。他には何かありますか?
また、とある保護者の方から聞いたお話しなのですが、自分の子は学校とおうちで過ごすことがほとんどで、大人を呼ぶときは先生と言い、家ではお父さん、お母さんと呼んでいる。誰かのことを◯◯さんと、呼べる機会が少ない中、ここ(放課後デイサービス)ではスタッフのことを◯◯さんと呼んでいて、そうやって呼ばせてもらっていることはすごく大事なんです、と言われました。
ここは大人を一個人として◯◯さん、と呼べる、子どもたちにとって貴重な場所の一つなのだと教えてもらいました。

子どもを理解し待ってあげられるように。ここは安心して過ごせる場

-運営する上でのこだわりなどはありますか?
子どもたちが安心して過ごせるように、「おかえり~」とおだやかな雰囲気で迎え入れることです。子ども達は、一人ひとり配慮することが違うので、子どもに合わせた時間軸でその子ができることを待ち、子ども自身が経験する中で自信に繋がるように丁寧に見守り、出来た時の嬉しい気持ちや頑張ったことに、気持ちを添えて一緒に喜び合えることを大切に思っています。
8年前の経験が浅い頃に比べて、その子のタイミングを自然と測って待ってあげられるのかな、また、この子がここまで出来る、ということを知っているから、出来ると信じて見守ることができるのかな、と思います。

その子の苦手な分野など、能力がアップするための働きかけでは、例えば、ベタべタした感触やそうしたものに触るのが苦手、という子どもの場合、そのベタベタがなければ、例えば道具を使えばクッキングができる、ということを知っておくと、声を掛けるときにも道具を見せて「これでやろうか?」と言うことができます。
もし、それを知らないでベタベタするものを見せてその子に「クッキングしよう」言っても
「え、それ触るのはちょっと、」ということでクッキング自体に取り組めない、ということもあると思うんですね。

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若い力と発想力を発揮して子どもたちの魅力を知り、関わってほしい。

-今後やっていきたいことを教えて下さい
今後は、子どもたちが楽しめることを常に想像し具体的にしていくこと、子ども達と自然の中で、土や水に触れて感触をおもいっきり楽しんだり、虫や植物に目を向け、歩きながら「鴨がいるね、落ち葉が舞っているね」と季節を味わうなど、体験の中から感じることを大切にしていきたいです。
また、現在も取り組んでいることですが、子どもたちを野菜の直売所や地元のスーパーに連れて行ったり、先輩が働いている作業所を訪問したりと地域に連れ出し、楽しく社会経験の幅を広げるようにしたいです。

社会で子どもたちを育む。子どもたちの居場所を広げ経験を深めさせたい。

-この仕事の意義についてはどうお考えですか?
家庭や学校ではない放課後の第三の場で、友達や大人と関わる中で、楽しい経験や社会生活を積むことは子ども自身はもちろんのこと、保護者にとっても、喜びになる点だと思います。また、社会に対しては、保護者や学校と連携を図りながら、成長を一緒に見守り、社会経験を広げる役目があると考えていますね。

-この仕事を興味がある方へメッセージをお願いします
人と人とが関わる仕事ですので思いがけないことに大汗をかくこともあり、思いがけないことに笑顔になることもたくさんある、と伝えたいです。
何年経験したからベテランだとは言えない仕事かもしれません。常に学びがあって、絶えず「どうすることがいいんだろう」と考えています。
答えは一つではありませんし、子どもたちも一年生から高校生までお預かりしていると当然成長、変化します。その中でこちらの対応も変化していきますので、若い力と発想力を活かせる仕事でもあります。
子ども達の魅力をぜひ身近に感じてみてください。

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【団体概要】
特定非営利活動法人ピッピ・親子サポートネット(http://npo-pippi.net/)の一事業である「となりのいえ」 2006年10月設立 放課後児童クラブ(学童)+放課後等デイサービスhttp://ppgakudo.pippisupport.net/
学齢期(小学生から高校生)の子どもたちが、障がいがある子も、ない子も、一つ屋根の下で放課後過ごす場所です。横浜市の中でも、学童保育と放課後等デイサービスが同居している施設は珍しく、日々いろいろなことが起こります。周りが自然に恵まれているので、四季折々、外での活動も楽しんでいます。


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スゴいい保育編集部
「スゴいい保育」を通じて保育という仕事の素晴らしさを伝えていくことにチャレンジするチーム。日本中の色んな「スゴい!」「いい!」保育を日々探し、みなさんに紹介します。

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