小児科医として、子育てにもっと寄り添いたい【病児保育往診医インタビュー】

【プロフィール】
吉野ラモナ (医療法人社団ペルル)マーガレットこどもクリニック勤務 小児科専門医

1981年生まれ。夫と子どもの5人暮らし。子どもを授かったことをきっかけに、いかに家庭と仕事の両立が困難かを自らも経験し、大学病院での勤務等を経て2014年より病児保育の往診業務に従事。”病気だけを診る”のではなく、子どもを取り巻く環境や状況も含め多面的に捉えた診療を行う。


大学病院から、病児保育の往診医へ

―病児保育の往診医をする前、病院勤務の時は、どんな生活だったのですか?

長男が1歳になってすぐに大学病院の病棟医として仕事を再開しました。長男を院内保育園に預けて、一年はフルタイムでの勤務。常に時間に追われ、心の余裕がなく、子どもにも主人にも申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

専門医の資格がとれたので、次男を出産した後はもう少しゆとりをもって働きたいなと思っていたんです。そんなときにタイミング良く、フローレンスに出会うことができました。

―フローレンスを知ったきっかけを教えてください。

2人の知人から、それぞれ別のタイミングで「フローレンスっていうところがあって、子育てとすごく両立しやすそうだから働いてみたらいいんじゃない?」と教えてもらいました。

でも、そのときはすぐに仕事を探そうと思っていなかったので「ふーん」と思って、聞き流していたんです。いざ仕事がしたいと思い、小児科学会のホームページで探し始めた時に、フローレンスの名前をみて「あ! 教えてもらったところだ!」と思い出し、フローレンスのホームページを見ました。代表の駒崎さんの理念に共感する部分も多く、運命的な出会いだと感じ応募しました。

現場の小さな不安に寄り添うことが、往診のやりがい

―病児保育の「往診医」としてのやりがいはどんなところですか?

病院での仕事は、子どもを診ることや治療することはもちろん、子どもの横で心配な気持ちいっぱいの親御さんに対して安心してもらえるように説明やアドバイスをするのが大きなやりがいでした。

なので、正直なところ、フローレンスで働き始めたばかりの頃は、子どもの横に親御さんのいない状況でのお仕事は、半分物足りないような感覚でした。

けれども、病児保育スタッフの皆さんが、「安心しました」「助かりました」と言ってくださるので、「そうか、これは利用会員さん親子のためでもあるけれども、それと同時にレスキュー隊員(※)さんに安心と安全を運ぶ仕事なんだな」と。そこにやりがいが感じられるようになりました。

※レスキュー隊員:フローレンスの病児保育スタッフであるこどもレスキュー隊員

―病院勤務の頃と変わったことはありますか?

スタッフの皆さんは、フローレンスの仕事以外にもそれぞれ多彩なご経験があり、社会をよりよくするために自分ができることは何かを考え行動されている人が多いと感じます。

世間話の中からも「社会の中での自分の役割って何だろう?」ということを考える時間ができました。病院勤務の時は、目の前の患者さんの病気の診断と治療に追われて、社会のことなどは考える余裕がなかったんです。

病児保育スタッフさん・往診のサポートスタッフさん・ドライバーさんなど、いろんな方と一緒に仕事をさせてもらえること自体が、とても幸せであり刺激的です。

―育休後、フローレンスでまた働こうと思ったきっかけはなんですか?

最初にフローレンスで働き始めて、4ヶ月ほど経った頃、第三子を授かりました。仕事を続けたい気持ちもありましたが、つわりや車酔いで仕事を一旦休まざるを得ない状況になってしまったんです。

フローレンスの皆さんにはご迷惑をおかけしたのにも関わらず、皆さんからお礼の言葉や出産への励ましなどの心温まる寄せ書きをいただきました。もう、それはそれは、感謝の気持ちでいっぱいでした。絶対にまたフローレンスで仕事をしたい!と強く思いました。

育休後に戻ってきても、本当に働きやすいなと感じます。

子どもの体調不良などでの急な休みにも対応してもらえますし、希望の帰宅時間に合わせて仕事をさせてもらえる。家族や親戚が近くにいない核家族の私にとっては、こんなに働きやすい環境が整った職場は他にないですね。

子育てに「もっと」寄り添う、小児科医の視点

―これからどんなことをしていきたいですか?

お薬が必要な病気はもちろんたくさんありますけど、ちょっとした風邪でもたくさんのお薬を飲んでいるお子さんを診ると、小児科医として申し訳ない気持ちになります。

お子さんのかかりつけ医である開業医の先生方も、親御さんに説明する時間や、親御さんの不安を聞く時間がもっとあれば、不要になるお薬はたくさんあると思います。でも、なかなか時間が割けないので、とりあえず処方となってしまっているのではないでしょうか。

なんでも便利な世の中で、わからないこともインターネットですぐに答えが見つかる時代。家事もボタン1つで済む時代。でも、子育てはそうはいかないし、病気も治るのには時間がかかりますよね。

親御さんに正しい知識を伝えることができれば、すぐに受診しなくても少し様子を見ることができると思います。子どもを「観察する力」とか、ちょっと待ってみてその症状がどうなっていくのか「待つ余裕」が本来必要なのかなって思うんです。

すぐに受診して、医師の指示のままにお薬を飲ませるだけでは、親御さん自身の視野や経験も広がりづらいですよね。

親御さんにお子さんの観察ポイントを伝えて、親御さんとともに、お子さんの病気を診ていくこと。自分の役割がそこにあるような気がしています。

小児科だけでもない、精神科だけでもない、新たな領域で

―病児保育だけではなく、医師のキャリアとしてどんなことをやってみたいと思いますか?

昔からの夢ですが、小児科の中でも心身症という分野でお子さんを支えていきたいと思っています。例えば、精神的なものからくる腹痛・頭痛・喘息・アトピーなどの身体症状。子どもは大人以上に心と体が密接に連動します。

自分自身も幼少期に、緊張すると吐いてしまったりして、心身症のような症状がでやすい子でした。

お医者さんに行ったら「何かいやなことでもあったのかな? まぁ、気持ちの問題だね」みたいな感じでさらっと言われたことが幼心にショックでした。

私のことを知りもせずに、「気持ちの問題だね、ハイハイ」と軽視されたような気もしましたし、「もうちょっと強くなりなさい」というメッセージにも聞こえて、当時はつらかったんですよね。

そういう状況におかれている子どもが、いかにちょっとした言葉がけにも敏感になっているかということも含めて、実体験として経験があるので、そういう子に寄り添う小児科医になりたいと思っています。

小児の心身症を専門に診ることのできる医師は少ないです。そういう疾患は子どもを取り巻く様々な環境にまで目をやらないといけません。

往診医といういまの立場だからこそ、小児科医療の行き届いていない部分が少しずつ見えてきました。

幅広い視野を持つためにも、フローレンスのような一歩病院を離れたところで働かせてもらうのはとてもいい経験になると思っています。

保育は本当にすごい。だから、医療のことで困ったら何でも聞いてほしい

―保育スタッフへメッセージをお願いします。

我が子を1対1でみるのも、そんなにたやすいことではないと思います。ずっと一緒にいるのは相当大変です。それを、よそのお家という環境で、なおかつ相手は毎回違うという条件の中で、保育されているのは本当にすごいし、頭があがりません。

病児保育の現場を見て、自分の子育てはどうなんだろうと常に考えます。

子どもの外遊びに付き合うのは自分の気持ちも発散できるし全く苦じゃないんですけど、部屋遊びは煮詰まってしまうんですよね。子どもたちに「外いこう!」ってよく言っています(笑) レスキュー隊員さんには、部屋遊びのテクニックを教えてほしいと思っています。

現場では、病気のことで不安なことがあれば、つまらないと思うことでもなんでも聞いてください。それで不安が解消されるのだとしたら、嬉しいです。

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スゴいい保育編集部
「スゴいい保育」を通じて保育という仕事の素晴らしさを伝えていくことにチャレンジするチーム。日本中の色んな「スゴい!」「いい!」保育を日々探し、みなさんに紹介します。

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