「大人の都合で、保育をしていませんか?」保育を通して、みらいをつくる子どもたちに贈りたいこと

「大人の都合で、保育をしていませんか?」保育を通して、みらいをつくる子どもたちに贈りたいこと

プロフィール

森永紗希子(もりなが さきこ)保育系短期大学卒業後、地元の認可保育園に勤務。結婚育児のために一旦退職するも9年後に再就職。 院内保育、病棟保育、介護職を経験。 2007年にNPO法人フローレンスに入社。

病児保育スーパーバイザー、研修育成担当を経て、現在はおうち保育園・みんなのみらいをつくる保育園の保育スーパーバイザーとして保育スタッフ育成や保育園運営サポートに従事。

「コップ、落としてもいいんじゃない?」

現場で保育士をしていましたが、疑問に思うことがたくさんあったんですね。それは、「大人の都合で、保育が行われているのではないか?」という疑問です。

例えば、食べる気持ちが出来ていない子どもに、「お皿ピカピカにしようね、がんばれ~!」と運動会のように応援するすがたです。ゆっくりその子のペースで食べてもいいのではないかな、と思うんです。

謝ろうという気持ちが出来ていない子どもに、「ごめんねしようね」と無理に言わせることにも、とても違和感がありました。子どもに言わせるのではなく大人が「ごめんね」「ありがとうね」と言ってる姿を見せるだけでいい気がします。

割れてもいいように、プラスチックのコップを使うのも嫌でした。落っことしてもいい、割ってしまった経験をさせればいいと思うんです。それをさせないのは、大人の都合ですよね。そんな現場を見ていて、保育が子どものことを一番に考えたものではなくなっている気がしていました。

子どもの時にどのように育てられたかは、大人になった時に出てくるのではないでしょうか? フローレンスで、若手保育スタッフの育成を担当していますが、「自ら考える力」が足りないな、と思うことが多くなっています。「本部としての考えを聞かせて下さい」「森永さんの考えは?」という風によく聞かれます。

それはなぜなんだろうと考えると、親や周囲から、「こうしなさい」と言われて育ってきたのかもしれません。もっと自分でよりよい保育を考えて、グイグイ追求して欲しいと思っています。

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子どもが自分で考えて行動するって、特別なことじゃない

テレビである保育園が特集されていて、「先生が決めない教育」を実践されていて、とても感銘を受けました。散歩中に虫を見つけ、子どもたちが立ち止まったら、いっしょに立ち止まり観察する。木の実を見つけたら、そこから遊びがはじまる。そんな保育ってとても素晴らしいと思うんですね。

私自身も、3人の娘を熱海の自然の中でそんな風に育てました。子どもが自分で歩けるようになり、少しずつ社会と関わりだしたら、子ども同士で話し合って、行動させてもいいんだなと気付きました。

保育士なのに、手作りおもちゃは一切つくったことがありませんでした。子ども達が虫をつかんで、「みてみて~」と言ってきたときに、こたえてあげただけです。

木の切れ端や葉っぱ、花や木の実でおままごとをする、そんな風に自由にさせていたら、ある日木の枝にカマキリの卵があったのか、部屋中カマキリの赤ちゃんだらけになり、「ギャー!」となったこともありました(笑)

最初は難しいかもしれませんが、「今日はあの公園に行こうね」と先生たちが手を引くのではなく、子どもたちが自分で、今日遊ぶところだって決めちゃえばいいんです。行きたいところに行けばいい、寝たくなければ寝なくてもいい。出来るようになった子にはどんどんやらせたい、と思っています。

私が勤めていた園ではよく、3歳からハサミを使わせる、と年齢で区切ります。そうではなく、ひとりひとりの習熟度によって、はさみを使わせていいと思うんです。

そんな保育をしていたらいつか、「今日はあの道を行ってみようよ!」といった会話が、子ども達から自然に出てくるんじゃないかと思います。

みらいで、いろんな人といっしょに生きる子どもたちに新しい保育を

みんなのみらいをつくる保育園で目指すような保育が広がっていって……困った人がいたら、すっと助けられるような人がたくさんいる社会になるといいな、と思っています。「うん、お互い様」という気持ちを持って、生きてほしいなと思います。

これからの社会では、いろんな人と助け合い、一緒に生きていくことがとても大切だと思っています。みんな、何かしらつらいことを抱えていたり、困っていたり、誰かの助けを必要とすることがたくさんあると思うんです。

そのためには「助けて」って言える自分であって欲しい。
ずっと一人で抱え込んで病気になったり、自殺したり、人を傷つけたり、悲しい連鎖が起きないように。

そして、助け合うためにはまず、自分の気持ちを知って、相手の気持ちに寄り添えるようになる必要があります。自分の気持ちと、相手の気持ちを「お互い様だよね」と言いながら共存させて、いっしょに生きていくためです。

だから、子どもたちには、たくさん話し合って、行動して欲しい、たくさんの経験をして欲しいと思っています。大人の都合にも大人の意見にも「違うよ」「僕は、私はこう思う」と堂々と言ってほしいです。みらいのために。そんな新しい保育を作っていきたいですね。

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スゴいい保育編集部
「スゴいい保育」を通じて保育という仕事の素晴らしさを伝えていくことにチャレンジするチーム。日本中の色んな「スゴい!」「いい!」保育を日々探し、みなさんに紹介します。

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