【フランス発】フランスの保育士の「プロ意識」って?責任を伴うからこその権利主張

前回は、労働に関する権利に焦点をあててフランスの労働時間について歴史的背景、意識を紹介しました。「プロ意識」という言葉がでてきたのですが、今回はこの「プロ意識」からフランスの保育士の労働環境、待遇について迫ります。

ところで、「プロ意識」とはどういう意味でしょうか。
この記事の中でいう「プロ意識」とは、その労働(サービス、パフォーマンス)に対してお金を貰うという意味でのプロとしての意識であると、一応定義しておきます。

保育士の場合、子どもを責任をもって安全に預かり、苦労や努力を伴いながらも最適な仕方で保育を全うするという意識…などというと、重すぎでしょうか。

ここで日本とフランスの違いということでいえば、「責任」と「苦労や努力」に対する考え方の違いがあります。
フランスでももちろん、「責任をもつ」ということは大事ですが、出来る限り「責任」を回避するという発想が見受けられます。

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「苦労や努力」はできる限り最低限。「最適な仕方」は保育士にとって合理的な範囲で

フランスでは、「それは私のせいではない」という言葉を大変よく耳にします。
日常生活の中でも、ちょっとしたことで「それは私のせいではない」という責任回避の言葉が必ず入ってきます(明らかに自分に責任があるとわかっている時でさえ)。
もちろん、仕事などでは何か問題があった際に自分の責任になるのは嫌なものですが、「子どもを責任をもって安全に預かる」にしても、出来る限り責任を負わないために仕事を制限するという態度が伴ってきます。
さらに、「苦労や努力」は必ず契約の範囲内ですので、出来る限り必要最低限で済むようにします。すると「最適な仕方」の意味も少し変わってきます。それは子どもにとって最適な仕方ではなく、保育士にとって最も合理的なという意味での最適な仕方ということになるわけです。
つまり、最小限の責任、最低限の努力で、最も合理的な仕方で、為すべき仕事を全うする意識ということです。もちろん、それぞれの保育士の考える理想的な保育、保育士のイメージがあり、それを実現しようと目指す意識もあります(単純に仕事だと割り切っている場合もあります)。とはいえ、「権利」に焦点をあてるとすれば、少なくともこのような側面もあるということができると思います。

保育士のヴァカンス休暇中は親が保育当番!


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親たちが運営する親保育所で見てみると、親は雇用者、保育士は被雇用者ということになりますが、親たちも労働に関する権利についての認識があるので、保育士が自分の権利を行使して休暇をとったり、余計な仕事はしないことに対して、上からの指示や要求をすることはありません。保育士が自分の権利を行使するのは当然だという考えがあるからで、それは親保育所に限ったことではなく、フランスの社会全体に共通する意識だと言えます。
さらにこうした労働者の権利は、子どもがいる場合は特に強く、産休や育休、子どもが病気の時の休暇があるのはもちろん、交代で取得しなければならないようなヴァカンス休暇も優先される場合が多いです。
親保育所の場合、こうして保育士たちが自由に休暇を取るとなると、保育当番を補充しなければならないのですべて親たちに負担がまわってきますが、これも彼らの権利であり、私達自身も子を持つ親として同じように仕事を休まなければならないことがあるので、仕方がないですね。

プロとして求められるレベルは高い。「子どもが好き」だけでは務まらないのはフランスも日本も同じ。


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だからといって、フランスでは保育士は仕事がしやすい職業とは言い切れません。
やはり子どもを預かる上での責任は大きく、「子どもが好き」というだけで務まる仕事ではありません。だからこそ労働時間や休暇の規定は重要で、フランス的なプロ意識というのも理にかなっているように見えます。
日本との根本的な違いは、保育士の仕事が世間に理解されているかどうかということよりも、保育士も含めた労働者の権利や自由が、一般的な認識として共有されているということだと思います。
もちろん、怠慢などの保育士の仕事ぶりに対する親の不満がないわけではありませんが、それは彼らの「仕事の制限」とは区別されるべきです。

フランスの保育士の労働環境について、労働時間や労働者の権利と自由という側面からお話しました。日本でもヴァカンス制度を望む声や、有給休暇の消化、労働時間の短縮などの議論がありますが、社会的な意識も変えていかなければならないでしょう。
とはいえ、歴史的に築かれたものであるということを踏まえると、単に海外の良いところを取り込むというだけでなく、さらに進んで日本的な労働環境というものを新たに考え出す必要があるのかもしれません。


文:LIBELLULE

フランス在住9年目。パリ第12大学大学院修了、現在は日本語教師、翻訳、ライターなどの仕事をしながら、3児の父親として育児にも忙しい日々をおくっています。
 

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