今までの経験すべてが、今日の1件の保育につながる【病児保育士インタビュー】

今までの経験すべてが、今日の1件の保育につながる【病児保育士インタビュー】

【プロフィール】
小林敦子 NPO法人フローレンス こどもレスキュー隊員
1960年生まれ。学校を卒業後、保育園へ就職。子育て中は一度保育を離れ販売職に従事。その後、院内保育等を経てフローレンスの病児保育スタッフへ転職。

現在は既往歴がある等、症状の重いお子さんの病児保育を行う一方で、新人研修も担当している。プライベートでは孫と遊ぶことが何よりの楽しみ。

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【保育の現場から一度離れて、再び保育の世界へ】

-病児保育のお仕事をはじめたきっかけは何ですか?

結婚前は保育園で勤めていましたが、子育て中はいったん保育の仕事から離れていました。

子育て中は、保育とは畑違いの、携帯電話の販売職。接客の仕事をしていて、いろいろな方と関わっていくうちにもう一度保育の仕事をしたいなと思い、院内保育園で保育の仕事を始めました。

そこでは、病院に勤めているお医者さんや看護師さんの「保育園がなくて仕事ができない」という声をきっかけに、病院の駐車場を壊して保育園をいちから作ることになり、その立ち上げからお手伝いしていました。立ち上げでは、経験豊富な人達が集まり、みんなで知恵をしぼりながら保育園を作っていきました。

園ができてからは、0・1歳児のリーダーを担当していたのですが、お子さんと直接関わる仕事以外の業務が増えたことで、1対1で子どもと向き合うことが大事な0・1歳児にとって、子どもの要求に答えられない保育はどうなのだろうか、と感じるようになりました。

また、勤務先の病院で病児保育室を作ったのですが、部屋があっても保育者が足りなくて、病児保育室が稼働できなかったんです。働く親御さん達のために必要な病児保育。今の病児保育はどうなっているのだろう?との思いから、インターネットで病児保育について調べていた時に、フローレンスと出会いました。

最初、フローレンスの病児保育を知ったとき、「病児保育の依頼に100%対応できるように共済型システムを導入している」ということに驚きました。また、病児保育はお子さんの急変などリスクの高い仕事ですが、研修体制や事務局のバックアップ体制がしっかりしているな、と感じました。

フローレンスのサイトを読んでいくうちに、1対1の保育をすることは、その子の一日を大事にしながら、愛情を与えることにつながるのだと、まだ応募もしていないのに、ワクワクしたことを覚えています。

【自分の保育を日々振り返ることが、やりがいにつながる】

-実際に訪問型病児保育のお仕事を始めてみて、どうでしたか?

思いたったらすぐ行動してしまうタイプなので、すぐにフローレンスの病児保育スタッフへ応募しましたが、手厚い研修体制など、想像どおりでした。疑問に感じたことを丁寧に答えてくださることはもちろん、認定病児保育スペシャリストの資格(※1)が取れることを知って、入社後すぐに勉強を始めました。

※1 日本病児保育協会が認定する日本初の病児保育のプロになるための資格

特に入社時の座学研修からは、学ぶことが多かったです。
病気のお子さんをお預かりするということで、当初は心配もありましたが、病状に応じたケアポイントの研修がありましたし、いつでも看護師に相談できる体制があるということが、安心につながっています。

現場に出る前だけでなく、日々経験を積んでからも、定期的に研修があって、自分の保育を振り返る機会が多いことが、やりがいにもつながっているように感じます。

男子2人の母だったので、自分の子育て中は外遊び中心でした。自分自身も外で活発に過ごすのが得意なタイプ(笑)。折り紙や、家の中でのゆったりした遊びは、他のスタッフさんのやり方も学び、自分の保育に取り入れています。

年下のスタッフから学ぶことも多いですし、保育の引き出しを増やすためにも、日々勉強ですね。

【必ず子どもが私に心を許してくれる瞬間がある!そんなとき、この仕事をやってよかったと思える】

-保育現場での嬉しかったこと、大変だったことはありますか?

いろいろなお子さんと関わっていく上で、100%うまくいくことってないんですよね。自分でも「失敗したな」と思ってしまうケースもあります。

例えば、「この家具は頭をぶつけたら危ないな」と気になってしまって、親御さんからの引き継ぎ時に、気遣いに欠ける言い方をしてしまったことがありました。

細かに確認した方が安心される親御さんもいれば、ポイントを押さえた聞き方が大切な親御さんもいて、それぞれ違います。

「お子さんを安心安全に一日お預かりする」という目的は一緒でも、親御さんもお子さんも、一人ひとり全く違うというのは、一期一会の病児保育ならではの面白さでもあり、難しさでもありますね。コミュニケーションは本当に奥が深いなと感じます。

その中で、初めて病児保育を利用する親御さんのアンケートで、

「子どもが泣かないか心配だったのですが、泣いていても何とかしますから大丈夫ですよ。遊んで待っていますね。と小林さんが言ってくださり、安心して仕事に行くことができました。」

と嬉しいお言葉をいただいたことがあって。今でもこの言葉は、仕事の原動力となっています。

あとは、やっぱりお子さんがすごくかわいいですね。最初は、ママやパパと離れるのが嫌で泣いてしまうお子さんは、たくさんいるんです。でも、どんな子でも必ず、遊んでいる時に私に心を許してくれる瞬間があるんですよ。子どもが懐いてくれた瞬間が醍醐味でこの仕事をやっているんだと思います。

今日一日、目の前のひとりのお子さんに、私の最大限の愛情を注いで保育ができるので、とても嬉しく思います。

大きいお子さんや小さいお子さん、一人ひとりの個性を受け入れることが、次に自分を動かしてくれる力になっています。いろいろな出会いが私にとって宝物なんです。

【1対1の保育を支えるのは、事務局のサポートとコミュニケーション】

逆に、保育中にミスをしてしまった時は、ミスを隠すのではなく、どんな小さなことでも、事務局にすぐ伝えるようにしています。

うまくいかない時や辛いこともあります。ただ、うまくいかない時って、それなりの理由があって、自分もそのような行動をしてしまった時だと思います。だから、自分も反省しながら、次の保育に活かそう!と思いますし、後輩にも同じ轍を踏まないように自分の失敗談を伝えています。

訪問型病児保育は1対1なので、保育者一人ひとりの背負っているものが多く、責任も大きいです。例えば、知らないお宅に向かうことから、開始時間に確実に着かなければならないこと、保育中の不測の事態にも1人の保育者しかいないことなど多くあります。

そんな時、私達にとっては事務局のサポートがとても大きいです。どんな時も1人で抱え込まず、保育中に起こったことは、全て事務局に報告することが、安心安全な病児保育のためには重要だと感じています。

-最後に、訪問型病児保育のお仕事を目指す人へ、メッセージをお願いします。

学ぶことによって自分を変えること、成長できるように日々努力することが大切だと伝えたいです。

誰でも失敗することはあります。その失敗を次に活かして自分の殻を破ることが必要なんだと思います。学び続けることで、すごくやりがいのあるお仕事になりますよ。

また、個人的には自分の子育てや孫育ての経験、保育士としての経験、すべてが役に立っているなぁと感じます。

私の今までの経験、会ってきたお子さんや親御さんたち全てが、今日の病児保育、目の前のお子さんとの1日につながっています。

それが、1対1の訪問型病児保育の何よりの醍醐味です。

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著者プロフィール

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スゴいい保育編集部
「スゴいい保育」を通じて保育という仕事の素晴らしさを伝えていくことにチャレンジするチーム。日本中の色んな「スゴい!」「いい!」保育を日々探し、みなさんに紹介します。

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