【フランス発】保育士の労働環境、待遇に迫る!労働に関する権利、歴史的背景を学ぼう

フランスの保育園ではサービス残業あるの?保育士の労働環境にズバリ迫ります

保育園の待機児童問題が深刻な今日、日本のメディアで取り上げられる話題には保育士の労働環境に関するものが相対的に少ないように思えます。中学校の課外活動に従事しなければならない教員の過酷な労働環境などはしばしばニュースになっていますが、保育園の中には同じように時間外労働やサービス残業を強いられている環境におかれている保育士の方々も多いのではないでしょうか。

今回は、保育士の労働環境、プロ意識について2回に渡ってご紹介します。初回は、労働に関する権利に焦点をあてています。中でもフランスの労働法典(日本の労働基準法に相当)で規定されている労働時間について、歴史的背景や意識の点から少し見ていきたいと思います。

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フランスでは、時間外労働やサービス残業が皆無ということはありませんが、労働者(保育士)の権利はしっかりと法で守られています。それでも現状に不満を持つ人も少なくないとはいえ、日本と比べるとそうした超過労働時間はかなり制限されていると言えます。

フランスの標準労働時間は35時間となっており(日本は40時間)、労使間の合意があれば最大46時間[例外的状況が認められる場合は60時間]と規定されています。

19世紀の産業革命以降、資本主義の黎明期には週80時間労働も珍しくはありませんでしたが、1936年には週40時間に制定、82年に39時間、2002年に35時間と、段階的に削減されてきました。そして2016年、企業の競争力強化や雇用の創出を狙い労働法典(日本の労働基準法に相当)を改正、その中で週35時間に変更は加えられなかったものの、労使の合意により可能な追加労働時間を延長、同じく労使の合意を条件として一日の最大労働時間も10時間から12時間へ延長されました。さらに解雇規制緩和や、労働者にとっては「改悪」となる諸々の案件を伴い、これに対して各地で数十万人を動員したデモや、改正に反対する企業のストなどが相次ぎました。

デモやストを通じて声をあげ、権利を勝ち取る!革命の経験の影響は大きい!

こうした市民によるデモやストは、今回の労働法典改正に限らず、フランスでは頻繁に起こります。自由や権利が脅かされた時のデモやストのような連帯行動が当然のように起こるのは、一つの国民性のようなものかもしれません。というのは、デモやストが法によって認められ、実際に効果をもつものであるとはいえ、現在の法的社会的システムでは当たり前であるというだけでなく、歴史的に形成された意識のようなものも、人々をデモやストへと駆り立てる原因の一つであるように思われるからです。

フランスは1789年のフランス革命の他にも、数々の革命を近現代に経験してきました。そうした革命を通じて、民衆や労働者が自分たちの力で何かを変え、守るということを知っているというわけです。これらの革命を通じて労働者本位の社会を目指す思想が発展し、労働者の権利を守るデモやストが根付いていきました。
フランスでは社会主義政党も力をもっており、実際に現政府(2017年2月現在)は社会党が与党ですが、先に述べた労働法典改正は労働者よりも企業、つまり資本主義目線での改正という意味が強く、その意味で「改悪」だと言えることができると思います。

※フランスの公教育機関の入り口には必ず「自由・平等・博愛」の文字が大きく書かれ、フランスの国旗が掲げられています。

権利は行使するから意味がある!有給消化は「不真面目」「怠惰」ではなくプロ意識の表れ

話を元に戻しますと、労働環境をめぐる権利は、それが脅かされたときに抵抗する権利と合わせて法によって守られていると同時に、人々はそうした権利をしっかりと行使します。もちろん年間5週間の有給休暇も全て消化しますし、契約外の仕事は拒否します。フランスで生活していると、実際にフランス人の仕事に対する意識が「不真面目」「怠惰」に見えることも多々あるのですが、反対に日本人は働きすぎで、権利の主張や抵抗ができない奴隷のようだと言われたとしても、確かに日本にはそういう労働環境があるというのは事実です。こうした日本とフランスの違いを考えると、「プロ意識」という言葉にも違いがあるように思われます。

今回は一旦ここで筆をおき、次の回では「プロ意識」についてレポートします。



文:LIBELLULE

フランス在住9年目。パリ第12大学大学院修了、現在は日本語教師、翻訳、ライターなどの仕事をしながら、3児の父親として育児にも忙しい日々をおくっています。
 

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