インフルエンザの予防と対策を伝授します!

インフルエンザの予防と対策を伝授します!

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37.5℃を超えると、保育園を利用できない!?親子を助ける病児保育とは

今回は冬の感染症の代表「インフルエンザ」について、予防と対策を伝授します。インフルエンザはかかると重症化することが多く、何をおいても「予防」が肝心です。

インフルエンザの型って何?どれくらい登園できなくなるの?病児保育での預かりは?そんな疑問を解消いたします。どうぞご覧ください。

インフルエンザの種類

インフルエンザウイルスには様々な種類があり、ヘマグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)の組み合わせによって、以下のような種類に分かれます。

・ Aソ連型(H1N1)
・ A香港型(H3N2, H1N2, H2N2)
・ 鳥インフルエンザ(H5N1, H3N9)など
・ B型

主にはA型とB型に分けられ、A型が圧倒的に多数です。
(ある調査ではA型が97%、B型が3%という結果が出ています)

―A型の遺伝子:変異しやすいので、ときどき新たなウイルスが出現し、大流行する
―B型の遺伝子:変異しにくく、いちど感染すると免疫が持続し、大流行しにくい

インフルエンザはこの型変わり(変異)を繰り返しています。

A型はヒトだけでなく動物にも感染し、おもに豚や鶏の体内で、新しい組み合わせのウイルスができます。それがヒトに感染するようになり、ヒトーヒト感染がしばしば起こるようになると「新型インフルエンザ」と呼びます。

大流行が起きるか否かはウイルスのタイプによります。

2009年の新型インフルエンザ騒動の時は、高齢者は免疫のある人が多く、小児と若年成人で患者が多くでました。過去に全く流行したことのないタイプの新型インフルエンザウイルスが出現した場合、大流行ないしパンデミック(世界流行)を起こす可能性があります。侮れない感染症です。

インフルエンザの流行時期

11月下旬から12月上旬ごろに始まり、翌年1月から3月ごろに患者数が増加、4月から5月にかけて減少していきます。

いったん流行が始まると、短期間に多くの人へ感染が広がっていくのが特徴です。

インフルエンザの症状

インフルエンザには以下のような症状が見られます。

 ●38℃以上の突然の発熱
 ●頭痛、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感などの全身症状
 ●のどの痛みや鼻水、咳
 ●食欲不振、嘔吐、腹痛、下痢などを伴うことも

合併症として、肺炎、脳炎、中耳炎、熱性けいれん、インフルエンザ脳症を併発する可能性があります。症状だけで、普通のかぜと、インフルエンザを見分けることはできません。また、発症早期にはウイルス量が少なく、迅速検査でインフルエンザと診断できません。

一番の安全策は、風邪っぽくて体調が不良の時は園などを休ませることです。休ませることには二つの目的があります。養生と、他者への感染を防ぐことです。

インフルエンザの潜伏期間は1~4日(平均2日間)です。インフルエンザの感染期間は発熱1日前から3日目をピークとし、7日目ごろまで感染力があります。低年齢児では長引くこともあります。

インフルエンザの感染経路としては
 ●つばなどによる飛沫感染
 ●唾液などがついた手指などによる接触感染
があります。

ただし、排出されたウイルスは何日間も感染性を保つことはなく、体外から出たら数時間で死滅します。

インフルエンザの予防

インフルエンザは何をおいても「予防」が肝心。

1.ワクチン接種
2.正しい手洗い
3.体調管理
4.適切な湿度
5.流行時期は人ごみを避ける

1.ワクチン接種

インフルエンザワクチン接種の効果は、年齢により異なります。

a) 6ヶ月未満の乳児:出産前の母体がインフルエンザワクチン接種を受けておくことで、インフルエンザの発病を減らすことができます。
b) 1歳未満の乳児:インフルエンザワクチン接種の有効性は明らかではありません。
c) 1歳以上の幼児:インフルエンザワクチン接種は有効です。

また、家族がワクチン接種を受けることで、家庭内での感染を減らすことが可能と考えられます。「自分は大丈夫」と考えて、ワクチン接種を受けない方が少なからずいらっしゃいます。家庭内にウイルスを持ち込まないように、接種をうけましょう。

また頻繁に会ったり、帰省の予定がある場合には祖父母にもワクチンを受けておいてもらいましょう。65歳以上の方は公費の補助があります。

インフルエンザワクチンは接種から効果が出るまで2週間ほどかかります。例年は12月から流行が始まるので、11月中旬までには接種を終えておきましょう。

小児のインフルエンザワクチンは2回(13歳未満)必要です。量が、3歳未満は1回0.25mLで、3歳以上は1回0.5mLです。理想的には4週あけて2回接種します。ですから、1回目は10月中に受けられると良いでしょう。不活化ワクチンです。生ワクチンを含め、他のワクチンと同時接種が可能です。

また、一部の医療機関では「フルミスト」というワクチンも取り扱っています。

従来のインフルエンザワクチンが注射による接種なのに対し、フルミストは鼻に噴霧するワクチンのため、痛みを伴いません。接種の際はかかりつけ医にご相談ください。

2.正しい手洗い

外から帰った時、食事の前、トイレの後などに正しく手洗いを実施することが大切。

「ちゃんと洗った」つもりでも、思いのほか洗い残しがあるものです。もういちど「正しい手洗いの手順」を確認しておきましょう。 (関連記事:【感染予防の基本!】正しい手洗いをマスターしよう!

3.体調管理
免疫力が低下していると、インフルエンザにかかりやすく、またかかったときに重症化しやすくなってしまいます。日頃から、食事の内容や、睡眠、適度な運動などで免疫を高める努力が大切です。

4.適度な湿度
インフルエンザの予防で「部屋の湿度は適切に」という言葉を聞いたことのある方も多いと思います。適切な湿度ってどのぐらいなのでしょうか。ある調査によると湿度が50%よりも低い、または70%よりも高いとウィルスが活性化するという結果が出ています。

つまり、湿度は低すぎても高すぎてもだめ。50%~60%の湿度が、ウイルスの活性化を抑制する「適度な湿度」になります。この50%~60%の適切な湿度を保つことが、予防につながります。

5.流行時期は人ごみを避ける
簡単そうで、じつは難しい予防方法ではありますが、流行時期にはできるだけ人ごみを避けるのも有効です。

そのほか、アルコール消毒も予防効果があります。おもちゃなど共有する場合はアルコール消毒をするようにしましょう。

インフルエンザのケアポイント

●定められた期間は安静にしてしっかり休養しましょう。
栄養を摂らなければと思ってタンパク質などを摂っても、具合が悪いときは栄養を吸収して身につけることができないため逆効果です。ウィダーインゼリーはタンパク質なのでお勧めしません。

お粥やうどんなどの炭水化物で栄養補給するのがいいでしょう。水分補給にはOS-1(砂糖と塩と水)がいいです。

抗インフルエンザウィルス薬によって解熱した場合でも、感染力が残っている場合もありますし、体調・体力が十分に回復しているとはいえません。

特に乳幼児は、いったん解熱しても再度発熱することもあります。後で述べる登園停止期間中は解熱したとしても安静に過ごしましょう。

解熱剤には要注意

解熱剤の種類によっては急性脳症(Reye症候群)を引き起こすことがあります。アスピリンは禁忌です。薬局で解熱剤を購入する際は、アセトアミノフェンという成分のものにしましょう。判断がつかない場合は、仮にパッケージに「小児用」と書かれていても、安易に解熱剤を服用させないように注意が必要です。

保育士の方へ―保育園で気を付けること

流行シーズンに差し掛かったら、徹底した予防対策が肝心です。

地域の流行情報をチェックし、掲示や手紙で保護者に向けての注意喚起をしましょう。以下の内容は、保育所内はもちろん、各家庭でも重要な感染予防です。

●咳エチケット

職員だけではなく、園児にも咳エチケットを指導しましょう。
咳・くしゃみをするときはティッシュと口で鼻を覆い、一度使ったら捨てるようにします。
ティッシュが無い場合にも、手で受け止めることの無いように、服の袖で受けるようにしましょう。

●マスク

感染しているものの、症状があらわれなかったり軽症で済むケースの割合は、園児より職員(成人)に高いと考えられます。保育所で流行している場合には全員がマスクをするなどして、感染防止に努めましょう。

また、園児がマスクをしている場合、かわいいマスクを園児同士で交換することが無いように注意しましょう。

●室温・湿度

ウィルスは乾燥した環境では長く活動してしまいます。また、乾燥により鼻やのどの粘膜を痛めていると感染しやすくなってしまいます。適度な温度(20℃~23℃)・湿度(50~60%)を保ちましょう。時折換気をすることも忘れずに。

インフルエンザの登園停止期間

学校保健安全法により、発熱した日を0日目として、発症後5日を経過し、 かつ解熱した日を0日目として(乳幼児の場合)解熱後3日を経過するまでと定められています。

病児保育にお勤めの方へ―病児保育で気を付けること

●隔離

感染症のため隔離はもちろん必要ですが、異なる型のインフルエンザの罹患児を一緒に保育すると、罹患していた型とは異なる型のインフルエンザにさらに罹患する場合があります。隔離の際は、どの型の罹患児なのかも留意しましょう。

●預かりの基準

多くの各施設・事業によりインフルエンザの際のお預かりの基準が定められてます。

例:発熱後3日目から、医師が病児保育の利用を認めた場合、インフルエンザはお預かり不可、タミフル服用時は不可、など

お預かり前に医師の診断や投薬の指示をきちんと確認することが大事です。

インフルエンザを正しく理解し、ご自身もお子さんも安全に過ごせる保育を目指しましょう。

~病児保育とは~

病児保育について詳しくはこちらの記事をご確認ください

37.5度を超えると、保育園を利用できない!?親子を助ける病児保育とは

参考文献・参考URL

認定病児保育スペシャリスト試験公式テキスト(一般財団法人 日本病児保育協会)
2012年改訂版「保育所における感染症ガイドライン」(厚生労働省)
*学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」(日本小児科学会)
国立感染症研究所
*インフルエンザ情報サービス(中外製薬)
保健相談マニュアル(日本小児医事出版社)
第1回保育スキルアップ・オープンセミナー資料(講師:ナビタスクリニック院長・久住英二先生)

などを参考に日本病児保育協会が作成し、医療法人社団 鉄医会の理事長で内科医の久住英二先生に監修いただいた2013年度版の記事をリライトしました。

著者プロフィール

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日本病児保育協会
病児保育の担い手を養成し、病児保育の質と認知度の向上を図り、更には担い手同士が「繋がる場」を生み出すことを目的として、2012年9月に設立された団体です。「子育てと仕事の両立が当然で、子どもが社会全体で幸福に育てられている日本社会」を目指し活動しています。

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