認可保育園と無認可保育園。保育を語るときに必ず知っておきたいこと

認可保育園と無認可保育園。保育を語るときに必ず知っておきたいこと

保育のニュースがもっと身近に。今さら聞けない、保育制度にまつわる素朴なQ&Aを、わかりやすく解説します。今回は、保育問題を語る前に知っておきたい、「基本のき」から。

「保育園」といってもいろんな種類がある

「保育園落ちた日本死ね」を発端に、「保育園」を巡る議論が活発化しています。ただ、議論の中で時々「話が噛み合ってないなぁ」と思うのが、「保育園」と定義しているものが人によって違うこと。そもそも、あなたの言っている「保育園」ってどの種類の保育園?というのをクリアにしないと、論点がずれてしまうようです。

「保育園」とは何か。児童福祉法にはこのように記載されています。

保育所は、保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的とする施設である。(児童福祉法第39条第1項)

「保育園」ということが多いですが、法律上の正式名称は"保育所"です。本来であれば、保護者の就労状況に関わらず、必要な人が必要な時に子どもを預けられる施設でなければなりません。そして、市町村には、保育(下図「認可保育所等」)を提供する義務があります。(児童福祉法第24条)

しかし、この法律上の”保育所”の定義が、すべての保育園に当てはまるわけではありません。そこがポイントです。

大きく2つに分けられる「保育園」

今回は、多くの方が「保育園」と聞いてイメージしやすい、図の赤丸で示す認可保育所等を代表する「認可保育園(認可保育所)」「無認可保育園(認可外保育施設)」について簡単に説明します。

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(図は東京都福祉保健局のHPより 赤は筆者)

「認可保育園」とは

「認可保育園(認可保育所)」は、国が定めた認可基準(施設の広さ、保育士等の職員数、給食設備など)をクリアし、都道府県知事(政令指定都市市長、中核市市長を含む)に認可された施設です。

「認可保育園」だと、国から補助金が出ます。各自治体が補助金額を上乗せすることもあります。子育て支援や待機児童解消に積極的な自治体は、上乗せ金額が高かったりします。

認可保育園には、「公立認可保育園」と「私立認可保育園」があります。「公立認可保育園」は自治体が、「私立認可保育園」は社会福祉法人、NPO法人、株式会社などが運営しています。

現在、「公立認可保育園」と「私立認可保育園」の割合は2対3ですが、各自治体で公立園の民営化が進められているため、公立園の数は減っていくと考えられます。データによると、私立園のほとんどは社会福祉法人の運営となっています。
参考:保育所の設置主体別認可状況等について(平成27年4月1日現在)

「無認可保育園」って?

「無認可保育園(認可外保育施設)」は、文字通り"認可されていない"保育園です。色々な施設があって、24時間保育をしていたり、保育方針が特徴的だったり、オプションでいろんな習い事ができるような人気園もあります。

認可保育園だと、補助金がもらえる代わりに「園児を選べない」「保育料の上乗せ不可」など縛りも発生しますので、あえて無認可のままで運営している園もあります。玉石混交で中には残念ながら劣悪な保育環境の園もあるようです。

ちなみに利用児童数を見ると、「認可保育園」2,330,658人 人、「無認可保育園」201,530人 と、「認可保育園」に通う子どもが圧倒的に多いことがわかります。
参考:保育所等関連状況取りまとめ(平成 27 年4月1日)
参考:平成26年度 認可外保育施設の現況取りまとめ(全体版)

「認可保育園」と「無認可保育園」 どっちがいいの?

よく「保育の質」という言葉が使われますが、「認可保育園」であれば、子ども1人あたりの保育士の数や、保育室の面積など、国の定める最低基準の「保育の質」は担保されていると言えるでしょう。

逆に言えば、「最低基準を担保している」だけで、「認可保育園=質が高い」とは言い切れません。公立園が1番良い、というわけでもありません。素晴らしい保育内容の「無認可保育園」もあれば、イマイチな保育をしている「公立認可保育園」もあります。(「保育の質って何?」っていう話をし始めると、いろんな価値観の違いもありますので、ここでは取り上げませんが……)

ただ、補助金が出ていない分、「無認可保育園」の保育料は、「認可保育園」に比べて高額になりがちです。また、保育施設での死亡事故件数は「無認可保育園」が「認可保育園」の2倍というデータもあります。
参考: 保育施設における事故報告集計(全体版)(PDF:145KB)

「認可」でも「無認可」でもない、「認証保育園」という選択肢

東京にお住まいの方は「認証保育園」にも馴染みがあるかもしれません。「認証保育園」は"認可外保育施設"ですが、「認可保育園」と「無認可保育園」の間というイメージです。

東京都など、待機児童問題が深刻な地域では「国の認可基準には達しないけど、自治体の基準に達していれば、独自の補助を出すよ」という政策をもっている自治体もあるのです。例えば、「土地が狭くて認可の面積基準はクリアできないけど、東京都認証のための基準はクリア」みたいな感じですね。

「認証保育園」になると、東京都から補助金が出ます。保護者の利用料は園ごとに定められるので、高額になることも多い代わりに、利便性に配慮した独自サービスをやっていたりもします。東京都の「認証保育園」のような制度は、横浜市の「横浜保育室」、仙台市の「せんだい保育室」など、他の自治体にもあります。

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「保育園落ちた」の保育園は、どの保育園なのか

ちょっと前に話題になった「東京23区の保育士平均年収は800万を超えている」という話は「公立認可保育園」の話でした。それに対して「保育士給与は全産業平均より10万円低い」という話は「私立認可保育園」から「無認可保育園」までの保育士給与の平均値。「保育園」と一言でくくっていますが、見ているところが違うので、話が噛み合わないのです。

「保育園落ちた」も、どの「保育園」かによって深刻度合いが変わります。

「公立認可保育園に落ちた」なのか、「認証保育園にも落ちた」なのか。前者だったら、私立園や認証保育園で良い園を見つければいいのですが、後者なら残るは無認可という選択肢しかありません。「無認可保育園にすら順番待ちで入れない」になる可能性さえあるのが、現在の待機児童問題の根深さです。


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